LAST SMILE



「お願い?」


「うん。聞いてくれる?」


「・・・内容によっては」


「何それ。絶対聞いてよ」


「はいはい」






雪が降る。


しんしんと、静かに。


祐兎の金色の髪に、真っ白な雪が舞い降りて
たちまちその光り輝く色を隠す。


あたしはそのまま、
背中に顔をうずめたまま、口を開いた。




「あたし・・・
 あんたが笑えっていうから、笑うね」


「・・・ああ」


「泣かないで、笑うからさ」


「・・・ああ」







だから・・・。



だからあなたは・・・。







「だから・・・」











「あんたも笑って・・?」











「・・・・・」


祐兎は黙った。


黙ったまま、ゆっくりと夜道を歩く。


寒いのか、鼻をすする音が響いた。



「そんな怖い顔ばっかりしてないで、
 笑って」


「・・・・怖い顔って」


「あたしも笑うから」


「・・・」


「だから、約束。ううん。
 あたしからのお願い」





祐兎、





ねぇ、祐兎・・・。





あたしはね。






あんたの笑った顔が好き。






亜貴の苦笑した顔よりも、
なによりも好きだよ。











「だから・・・笑ってよ」





何も考えずに、

何も悟らずに、

ただ自然と、

子供のように


無邪気に笑うあなたのあの笑顔が


もう一度みたくてたまらないの。









「あたしは―」







何だか不思議。



泣きたくなった。



だって、しょうがないじゃない。




あたしは、いつの間にか、
あんたのことが







祐兎のことが好きになったみたい。









「・・・あぁ」







祐兎は、黙ったあたしを振り返らずに、
そのまま短く返事をした。



気付かれてしまったかな?



伝わってしまったかな?









ねぇ、祐兎。







あなたは一体、何に返事を返しましたか?





それから、祐兎はあたしが無意識に流していた
音のない涙が止まるまで、



ずっと、遠回りをして付き合ってくれた。



冷たい風が、あたしの涙を乾かしていく。



次々に溢れる涙を必死に抑えようと、
祐兎の背中に顔をうずめて、



そのあたたかさを感じた。





< 124 / 173 >

この作品をシェア

pagetop