LAST SMILE



「ん。何くれんの?」


「は、はぁ?あんた、
 この状況で雰囲気台無しじゃない!!」


「何の雰囲気だよ」


「・・・馬鹿」


「あんだと?つうか、寒ぃから帰ろうぜ。
 あいつらももう帰したしな」


「そうなの?・・ごめん」


「謝んなって。ホラ」



そういって、
祐兎はあたしに手を差し伸べてきた。


あたしはそっと、その手をとる。


立ち上がろうとすると、足がガクッと崩れた。



「おっと・・。何でお前は
 毎回腰抜けてんだよ!?」


「しょ、しょうがないでしょ!?
 寒いの忘れてたのよ!!」



「はぁー。世話のやける女だな。お前」



祐兎は大きなため息をつき、
呆れた顔をしてあたしを見た。



しょうがないじゃない。


だって、祐兎の手だって、
寒いところにいるから冷たいはずなのに、


すごくあたたかくて、びっくりしたんだもん。


なんていえるはずもなくて・・・。


祐兎がそっと背中を向けた。


「え?」


「ん」


「い、いいよ。負担になると大変だし」


「馬鹿。そう思うなら早く乗れ。
 寒いとこにいるほうが負担だわ」



そっか。


それもそうだ。


あたしは急いで祐兎に体を預けた。



「あれ?お前、なんか前よりも重くなった?」


「うっさい。気のせいでしょ」



そんな冗談を言いながら、祐兎は歩きだした。



いつの間にか積もっていた地面を
サクサクと踏みしめる音が聞こえる。



あたしは片手でココアを握りしめていた。




(祐兎・・・寒いかな?)



そう思って、あたしは祐兎の首筋に
ココアをそっと押し当てた。



祐兎は一瞬体をピクっと反応させて、
ちらっとあたしを振り返った。



「なにしてんだよ」


「えっと。寒いかな~?って」


「別に。寒くねぇよ。
 ・・・お前乗っかってるし」




え・・・?


それはどういう意味で?


あたし、さっきから
祐兎の言動一つ一つに反応しすぎ。


火照る自分の頬の熱を感じる。


あたしは祐兎の背中に顔をうずめた。



「麗華?」


「ねぇ、祐兎・・・」


「あ?」







「お願いがあるの」










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