LAST SMILE



祐兎が怒鳴る。


あたしは口を噤んで、唇を噛み締めた。





「ごめん・・・」


あたしはすっと立ち上がった。


祐兎もたとうとして、足を崩す。


「祐兎。手」


「ああ。サンキュ」




あたしが差し出した手を
ぐっと掴んで立ち上がる。



「行くか!」





あたしたちはステージにたった。



それから5曲、6曲とこなしていって、
7曲目を終えた。




最後の曲を始める。



祐兎は次第に顔をしかめる頻度が多くなって、
ついには、最後の曲でミスを一つした。



それを亜貴が咄嗟にカバーに入ったから
お客さんは気付かないまま盛り上がっていた。







馬鹿。



祐兎の馬鹿。




あたしに手を借りなきゃ
立てないほど、辛いくせに。



朝、あたしに寄りかかってないと
強がれないほど、しんどかったくせに。




顔をしかめなきゃいけないほど、
我慢できない苦しさを感じてるくせに・・。




祐兎はほんとうに馬鹿だよ。



自分の命と、



このライブと、




どっちが大事なのよ。





こっちまで辛くなってくる。



だけどあたしは、
歌いきらなくちゃいけない。





そういうことでしょ?
祐兎。




あそこで怒鳴ったのは、
あたしにBlue skyのREIとして


頑張れっていいたかったんでしょ?



あたしは頑張って、
祐兎を意識しないように歌い続けた。




ようやく、8曲目が終わって、声援が届く。



あたしたちに、
アンコールの声が届く。







あたしはみんなの方を振り返った。



みんなは黙って笑うと、頷いた。






ついにきた。


あたしがやりたかった、バラード・・・。











祐兎が静かに、ギターを鳴らした。






< 132 / 173 >

この作品をシェア

pagetop