春恋~春来い~
帰りはまた蒼太が家まで送ってくれた。断ったんだけど、蒼太は『これくらいの事、やらせてくれ』って聞かなかった。











家の前に着き、蒼太と別れた。
あ、そうだ。鍵…
ゴソゴソ………
あれ?ない………!?
ヤバい…落としちゃったかも…










あ。あの公園。ふと帰りに寄った公園を思い出した。
あそこかもしれない…!










どこ?出てきてよ…









ポツリ……ポツリ……ザー
雨まで降ってきた。空も暗くなってきて…









探しても探しても見つからなくて…
なんで…無いの…?私、夏輝に殺される…。
出てきてよぉ…









急に雨が止んだ。いや、私の所だけ。視界には雨が降っている。








振り向くと、そこには夏輝が傘を持って立っていた…。








「夏輝ぃっ!」









私は夏輝に抱きついてしまった。雨ですごく寒くて、暗闇が怖くて…。私は涙が出てきた。夏輝に見られたくない…









「…ど、どうしたんだよ!?」











「私、鍵…ヒクッ」










「鍵?ああ、屋上のか!」










「私、鍵…落としちゃった…。学校の大切な物なのに…ごめん…。」











私の頭に、あの時と同じように夏輝の手が乗っかった。











「え?」








「バーカ。こんなずぶ濡れになるまで探してるヤツがいるか?お前ってホントにバカだな。鍵ならいくらでもあるじゃんか。でもな、春南、お前は一人しか居ないんだぞ。俺、お前を無くしたら、弁当もなくなるし、家事だって出来ない。父さんや母さんも困るだろ。だからもう二度と心配かけるんじゃねーぞ。バカ。」









「バカって言い過ぎ…。夏輝がバカだから妹もバカなの…。でも…ごめん。それと…ありがと…。」










「ほら、濡れるからくっつくなよ。帰るぞ。」








「うん…」









夏輝、やっぱり優しいんだね。私の自慢の兄だよ。

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