マーメイドの恋[完結]
博多駅まで戻ってきたので、そのまま又家に帰ればいい。
しかし、素知らぬ顔をして通り抜けたといっても、心はかなりのショックを受けていた。
足がガクガクとして力が入らず、体中が
震え、心臓がドキドキと波打っていた。
涙が溢れてこぼれていきそうだ。
伊原には、他に女がいるのではないかと薄々思ってはいたが、目の当たりにしてみると、夏子の体がバラバラになりそうなくらいの衝撃だったのだ。
ーどうしてこんなに辛い想いをさせるのー
もう絶対に許せないし、伊原も何も言い訳はできないだろう。
ー家に帰りたくない。ひとりになりたくない。倉沢くんに会いたいー
「会いたい」
夏子は、倉沢にLINEを送っていた。
「どうしたんですか?昨夜は夜勤だったので、今日は会えますよ。家にいるんですか」