マーメイドの恋[完結]

夏子はドアを開けずに、内側から返事をした。


「何か用事ですか?」


「夏子!今日のことで話があるんよ。電話もしたばってん、出らんけん家まで来たとよ。誰かおるんね?」


「友達が来てるのよ。それに話することなんか何もないわ。わかってるでしょ」


「だけん、それを説明したいとよ。ちょっと出てきてくれんね」


「今日は無理です。今度合鍵は返しに行きますので、その時にお願いします」


「わかった。待っとるけんね」


駐車場には倉沢の車が停まっている。
部屋に男がいるのはわかったのだろう。


しかし、それで良かったのだと夏子は思った。
あんな仕打ちをしておいて、何を説明することがあるというのか。
もう騙されることは絶対にないのに。



< 124 / 169 >

この作品をシェア

pagetop