マーメイドの恋[完結]
夜の海に行っても、波の音がするだけで何も見えないのに、それでも行く理由は考えなくてもわかる。
伊原は砂浜の近くに入れる道を走り、車を停めた。
「ん〜久しぶりやね〜夏子ちゃんが、海が好きって言うから、急に海を見たくなったよ。と言っても何も見えんばってんね。あはは」
夏子は黙っていた。
黙っていては相手の思うツボだとわかっているのに、怖くて言葉が出なかったのだ。
「夏子ちゃんどうしたと?俺が怖い?」
怖い、とほんとのことを言ったらどうするのだろうか。
言っても怖がらなくていいと言うだけなのだろう。
「俺、ずっと夏子ちゃんのこと綺麗な子やね〜と思いよったばってん、俺みたいの相手にしてくれんやろと思って諦めとったんよ」
それなら、そのまま諦めてもらうことはできないのか。
「夏子ちゃん俺のこと嫌いね?俺は夏子ちゃんと付き合いたい。駄目かな」