マーメイドの恋[完結]
伊原にビールを渡しながら夏子は聞いた。
「ぷっ。お湯の量は設定してあるから、溢れる前に止まるんよ。夏子のとこの風呂はあのタイプと違うのか?」
「うん。喋らないわ。うちのお風呂は」
「あははは。無口なお風呂なんやね」
「そうよ。私に似てるのよ」
「夏子おいで。可愛すぎて、又抱きたくなったばい」
「駄目よ。お風呂入るんだから」
「いいけん、おいでって」
「嫌だってば」
伊原はベッドから出て夏子を追いかけた。
「あはは。篤志さん裸のまま」
「こら、夏子逃げんとって。なんで逃げるとね」
「篤志さんが追いかけるから逃げるとよ。あはは」
ふたりはまるで子供のように追いかけっこをした。