マーメイドの恋[完結]
シングルベッドに、小さなソファーにテーブルと小さな冷蔵庫。
ほんとにシンプルというか、殺風景な部屋だ。
カーテンも、お母さんが選んでつけたような柄のものだ。
伊原には家などいらないのだ。
それは奥さんなどというものも、必要ないということではないのかと、夏子は又不安になってきた。
いつ帰ってくるのかもわからない伊原を待って1日を過ごすのか。
夏子の作った食事など、食べることもないのではないかと思う。
「おはよう夏子。顔、洗ってくるよ」
「おはよう。じゃあ、シーツとか洗濯するね今から」
「そんなのお袋が来てやるよ」
「嫌よ、私も使ったものをお母さんに洗ってもらうなんて」
これだけはお母さんにやってもらうわけにはいかない。
昨夜ふたりが愛し合った後のものなど。