マーメイドの恋[完結]

「でも私、しつこく迫られて付き合っては、すぐに飽きられて捨てられる女なのよ」


「俺はそんなことしませんから!」


そんなこと信用できるはずがない。
うるさいので、LINEの交換だけして別れた。


夏子は、倉沢の車から降り、そのまま海岸の方へ歩いていった。
10月も、もうすぐ終わるが、まだ午後の3時にもならない時間の、太陽の日差しは暑かった。


海の中に入ってみようか。
泳げないマーメイドは、海のもくずとなってしまうのだろうか。
それならそれでも構わないような気がした。


ー疲れたー


夢もなく、男に騙されるだけの人生。
夏子には目標も希望も何もないのだ。


夏子に必要なのは海だけ。
それならいっそのこと、海の中へと消えていっても何の不思議もないのではないか。


ー帰りたいー


海へ。
海の中へ……。


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