マーメイドの恋[完結]
「夏子さん!何をしてるんですか!」
誰かに後ろから抱きしめられて、夏子は我に返った。
「倉沢くん、どうしたの?」
「どうしたのじゃないですよ。車の中から夏子さんを見ていたら、海の方へ行って、そのまま海の中に入って行こうとするから、慌てて追いかけて来たんですよ」
「あぁ、泳いでみようかな〜と思って」
「夏子さん大丈夫ですか?夏子さん泳げないんですよね?それに、もう10月の終わりで、泳ぐのなんか無理に決まってるじゃないですか!というより洋服のままなんですよ」
「ううう……うわぁぁぁ……」
夏子は倉沢に抱きついて泣いた。
ー篤志さんー
伊原と別れたくない。
伊原とちゃんと話をして、あの女性とは何でもないという言葉を聞きたくてたまらなかった。