マーメイドの恋[完結]
別れられない。
伊原が夏子と別れると言わないなら、女性のことを嘘ついても構わないと思った。
伊原を失うことの方が怖かったのだ。
「夏子さんのこと、ほおっておけないよ。そばにいたい。何もしないから夏子さんの部屋に行ってもいいかな?」
「倉沢くんありがとう。私ね、彼とまだちゃんと話してないの。だからちゃんと話そうと思う。それで彼が、私を選ばないと言うのなら忘れるわ。心配かけてごめんね」
「ほんとに大丈夫なんですか?」
「大丈夫。マンションに戻るから」
「いつでもLINE送って下さいね」
「うん。ありがとう」
夏子はマンションに帰った。
ケータイをバッグから取り出して、伊原からの着信はなかったかと見てみたが、入っていなかった。