マーメイドの恋[完結]

マンション前の道路に、伊原の車が停まっていた。
近づくと助手席の窓が開いた。


「夏子、駐車場あると?」


伊原が運転席から助手席の方に身を乗り出すようにして聞いた。
夏子は、伊原を部屋に入れようかどうか迷ったが、ゆっくり話すには入れるしかないと思った。


「中にある。33番が私のところだから」


夏子は車を持たないが、1台分の駐車スペースは管理費の中に入れ込まれていた。
伊原が車から降りるのを待ち、ふたりでエントランスへ入りエレベーターに乗った。
夏子は6のボタンを押した。


「6階なんやね。俺んとこより上やん」


「うん。でも殺風景な部屋よ。驚かないでね」


もう少し、女らしいインテリアなどを揃えておけばよかったと、夏子は後悔した。
ただ、海を見たいだけに購入したマンションだったので、お洒落感がゼロなのだ。


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