マーメイドの恋[完結]

「どうぞ」


夏子の部屋603号室に伊原を招き入れた。


「お〜。うちより広かね〜。部屋何個あるんね?海もここから見えるんやね。さすが夏子やね」


「2LDKだから」


「夏子ごめん」


伊原に抱きしめられた。


「ちゃんと話して下さい」


このまま抱かれて、うやむやにされるのは嫌だった。
伊原には、窓側に置いてあるソファーに座ってもらい、夏子はダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。


「恵美は彼女じゃないよ」


「でも、篤志さんにあそこでいつも抱かれてるって言ってました。部屋の掃除に来てたのも、お母さんじゃなくてエミさんって人だったんですね」


「飲み屋で知り合ったんだよ。なんとなくそういう関係になったけど、付き合うつもりはないって言って、向こうもそれを承知しとったんやけどね」


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