マーメイドの恋[完結]

身体だけの付き合いを承知する女なんているのだろうか。
少なくとも、エミという女は伊原のことが好きだから部屋に来ていたのだ。


「なんで合鍵を渡したままなんですか」


「返してくれって言ったっちゃけどね、好きな女ができたけんって。でも掃除だけには来るって言って聞かないし、なかなか恵美と会うこともなかったけん。夏子と付き合うようになってからは、恵美とは身体の関係はないよ。これはほんとやけん!」


「これからどうするんですか。あの人も部屋に入れて、私とも付き合うんですか」


「今日、鍵は返してもらったよ。夏子からのメール見て、すぐにマンションに戻ったんだよ。特殊な鍵やけん恵美が合鍵を作ることはできないよ」


「エミさんのこと、好きじゃないのにセックスしてたの?」


「あいつがしてくれって言うけんしてたよ。好きという気持ちはなかった。わかってくれよ夏子」


これ以上、問い詰めても仕方ないと夏子は思った。
とにかく伊原が選んだ女は夏子ということなのだから。


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