先生がくれた「明日」
「何、その顔。」



すべてが終わると、彼は冷たい表情で私を見下ろしていた。



「軽い女だと思ったから連れて来たのに。何だよ、その被害者面。」



分かっている。

私が悪いんだって。

すべては、私のせいなんだって。


彼を裏切ったのも事実。

軽い女を装ったのも、事実。


こういうことになると、全く予想していなかったかと言えば、それも嘘。

だけど、どこかで私は甘く考えていたんだ。

レシピを聞いて、すぐに逃げ出せばいいんだと。


やっぱり、こんな仕事向いていなかったんだ。

最初から断ればよかったんだよ。


こんなことまでして、お金を稼いでも。

こんなことして稼いだお金で、歩のために何かを買ってやるなんてこと、できない。

穢れのない歩に、そんなこと―――



服を着て、立ち上がって。

ふらふらと家を出た頃、もう辺りは真っ暗だった。

悪いことに雨まで降っていて。


傘を持っていない私は、雨の中ふらふらと歩き続けた。

季節の変わり目の、冷たい雨が、容赦なく私に打ちつける。

冷えた指先をかばうように手を握りしめると、爪先が掌に食い込みそうになる。


ばかだ、私。


本当にばか。


貧乏でも、綺麗な体でいたかったのに。


明るい貧乏でいたかったのに。



下腹部の鈍痛を感じる。

それが、さっきの出来事は、嘘じゃないと私に伝えている。

取り返しのつかないことが世の中にはあるんだと、初めて、思い知った―――
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