先生がくれた「明日」
「……おい新庄、聞いてるのか?」




気付いたら、何やらお説教が始まっていたらしい。

私はきょとん、とした顔で先生を見上げた。



「いくら成績優秀だからって、校則違反をして許さるなんてことはないんだ。一体何のためにこんなことしてる?遊ぶためか?」



厳しい口調の先生が、私を責める。

遊ぶため、なんて言われたら不本意だな。



「違うよ、先生。」


「違うなら何故バイトなんかしてるんだ?いいか、人生にはな、勉強をしなくてはいけない時と言うのがあって……、」



まだまだ長くなりそうな先生のお説教。

バイト、クビになっちゃうな。

そしたらまた、次のバイト探さなきゃ。


そもそも、わざと学校から離れたスーパーでバイトしてたのに、何でこんなところに跡部先生が来るんだろう。

運が悪いとしか言いようがない。



「新庄、とにかくバイトを辞めるんだ。今から一緒に行って、頭下げてやるから。」


「はーい。」



口を尖らせて答える。

先生は、不満そうに私を見下ろす。

私の態度が気に食わなかったのだろう。



「新庄、文句があるなら言い返せ。今の内だぞ。」


「たくさんあるけど、言いません。」


「ったく。」



跡部先生は、再び私の手首をつかむと、強い力で引きずりはじめた。

そんなふうに捕まえなくたって、逃げやしないのに。



「先生、痛い。」


「少しくらい我慢しろ。」



そう言いながらも、少し掴む力を弱める先生。

こんなとこ、先生のファンに見られたら敵に回されること間違いなしだ。



結局そのままスーパーに引きずられて。

担当のおばちゃんに、先生と一緒に頭を下げた。

おばちゃんは驚いていた。


確かに私は、年齢を偽って働いていたわけで。

でも、そんなことはパートさんたちもうすうす勘付いていて。

それよりも、私を連れてきた跡部先生のかっこよさに、驚いているらしかった。



「いいのよー、また入れる人を探すから。」



そう言いながらも、おばちゃんの目は先生に釘付けだったもん……。

何だ、この人の幅広い年齢層からの支持は。

私は、少し呆れながら、私のためにぺこぺこする跡部先生の背中を見つめた。

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