先生がくれた「明日」
第5章 悲しみと喜びと

異変

そうして、季節は流れて。

厳しい冬を越えて、春が来た。

私は、高校3年生になった―――




「莉子。ラストスパートだぞ。」


「分かってるよ先生。大丈夫だって。」


「大丈夫なわけあるか!いいか?お前は一度で内定を取らないといけないんだ。」


「そんなにプレッシャー掛けないでよ。」




先生は、異動もなくて。

約束通り、私のそばでずっとサポートしてくれた。

感謝してもしきれないくらい。


初級の試験を受けるのは、毎年20人くらい。

そして、内定者数は年によって変わる。

大体、2人から4人だ。

狭き門には違いない。


だから、私は必死に勉強した。

試験は6月から始まるから、みんなの受験とは大違いだ。



「心配だなあ。隣について行って、耳打ちしてやりたいくらい。」


「大丈夫!先生がいなくても、ちゃんとできるから。」


「面接でタメ口利くなよ。」


「そんなことするわけないじゃん!」



そんなやり取りを続けるうちに、私はいつしか当たり前に感じていた。

先生が、隣にいるということを―――



先生、あなたは随分前から、私に教えてくれていたのに。
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