今も。これからも。ずっと、きみだけが好き。
 陽菜はドアノブに手をかけたまま立ち止まった。


「お母さんはいつになったら、わたしを認めてくれるの? まだ、まだ、まだって、どこまで上を目指せばいいの? オリンピックで金メダルを取らないと認めてくれないの? わたしだって負けることはあるの。知ってるでしょう? それなのに、優勝しなきゃダメなの? 負けることも許されないの。そんなの……」


 陽菜は背中を向けたまま、思いを吐き出した。

 それから、おばさんに顔を向けることもなく、部屋を出て行った。


 パタンと閉まったドアの音が虚しく響く。


「……」

 おばさんは言葉もなく茫然と立ちつくしていた。


 僕も初めて聞いた陽菜の弱音。


 勝つことが使命。
 勝って当たり前。


 陽菜もずっと、優勝を目指してきたはずなのに。



 不安とプレッシャーの中で戦っていたのかもしれない。
  
 
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