名無しの手紙

「人の下駄箱で何してんの?」

ふりかえったところにあいつがいた。

「自意識過剰?お前の下駄箱に用なんかない」

わたしはできるだけ顔を見ないようにして答えた。

一瞬、不快そうに歪んだあいつの顔が見えた。

それから舌打ちが聞こえてきた。

「あんたほんとうざいな」

これまでも何度も聞いたその言葉。

聞くたびに傷つき、そして

聞くたびに安心するんだ。

よかった、今日も”ちゃんと”嫌われてる。
< 2 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop