名無しの手紙
あいつはほんの少しだけ動揺して、だけどすぐに元の調子に戻って、

「あんたが花持ってくんのは許さねえから」

そして自分の下駄箱を開けた。

中にある手紙を手にとって、ほんのちょっと嬉しそうな顔を一瞬だけして、それからわたしの方を見て不機嫌そうな顔に戻った。

今にも舌打ちが聞こえてきそうな仏頂面。

ミカが死んでから、わたしに向けられるようになったこの顔を見て、
あいつの笑顔が見たいと何度思っただろう。

鋭い目でわたしを睨んで、そのまま何も言わずにあいつは学校後にした。

< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop