誕生日は3月14日
「亜弥…」

名前を呼ぶと、彼女の肩がビクッと震えた。

亜弥も意識してる…?

ゆっくり顔を上げ、そっと閉じられた瞳。

彼女の肩に手を置き、その唇に、自分の唇を重ねた。

一瞬、触れただけのキス。

だけど…
その瞬間、時間(トキ)が止まったような気がした。

「…好き」

亜弥の声が聞こえた。

「俺も、好きだよ…」

観覧車は頂上を過ぎて、あとは降りて行くだけ。

静寂が、ゴンドラの中を包む。

カチャッと扉が開き、
「お疲れさまでした」と係の明るい声が響く。

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