きみは金色


なにかを越えるのは、勇気がいる。



おれの場合、それは気合を入れればヒョイッと飛び越えられる程度だったり。



助走をある程度つければ、平気だったりするけど。



おれには想像できない、幅が広くて深い溝も存在したりするんだ。



とくに、何事にも慎重な彼女の前には。











冬の朝は、つま先がかなり冷える。


靴下の二重ばきでも対抗できない、シンシンと沁み込んでくる寒さだ。



女子のスカートからむき出しになった足とか正直信じられないし、男子でよかった。この季節は、本当にそう思ったりする。



でも反対に。


心がポッカポカにあったかいのは、市ノ瀬……じゃなくて。



真子との関係が、順調に進んでいるからなんだと、思う。





「まーこっ」



朝の、まだ人数がそろっていない教室。


席についている真子の前に回りこんだおれは、その場にしゃがむと、机に両腕をのっけた。



「今日って、塾ない日?」



ぱちくり動く真子の目を見上げながら、たずねる。



「あ、うん!今日は…」

「どっか寄ってかね?」


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