きみは金色
なにかを越えるのは、勇気がいる。
おれの場合、それは気合を入れればヒョイッと飛び越えられる程度だったり。
助走をある程度つければ、平気だったりするけど。
おれには想像できない、幅が広くて深い溝も存在したりするんだ。
とくに、何事にも慎重な彼女の前には。
*
冬の朝は、つま先がかなり冷える。
靴下の二重ばきでも対抗できない、シンシンと沁み込んでくる寒さだ。
女子のスカートからむき出しになった足とか正直信じられないし、男子でよかった。この季節は、本当にそう思ったりする。
でも反対に。
心がポッカポカにあったかいのは、市ノ瀬……じゃなくて。
真子との関係が、順調に進んでいるからなんだと、思う。
「まーこっ」
朝の、まだ人数がそろっていない教室。
席についている真子の前に回りこんだおれは、その場にしゃがむと、机に両腕をのっけた。
「今日って、塾ない日?」
ぱちくり動く真子の目を見上げながら、たずねる。
「あ、うん!今日は…」
「どっか寄ってかね?」