久しぶりだね初対面
第六章
目が覚める。

そこはもう、トイレの個室ではなかった。

真っ暗な部屋の中。

時計が時を刻む音が、静まり返った部屋の中で唯一の音だった。

その時計を手にして、時間を凝視する。

午前一時三十七分。

そして今度はカレンダーを見る。

…カレンダーを見て感動の涙を流す奴は、世界広しと言えども俺だけだろう。

「帰ってきた…」

小さく呟き、ベッドの上にうつ伏せに倒れる。

ここは間違いなく、俺の時代、俺の家、俺の部屋だった。

長かった時間旅行が、やっと終わったのだ。

俺にとっては数日にも思える、長い長い時間旅行。

しかし実際のところはというと、俺が眠ってからほんの数時間の間の出来事だった。

もしかしたら、ただの夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。


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