ライギョ
待ち時間も千晶さんとなら全く苦にならなかった。


元より中途半端な時間に来た事もあり、割りとスムーズに店内に入る事が出来た。


「適当に頼んじゃって良いですか?苦手なものありますか?」


「ううん、大丈夫。お任せしていい?」


「じゃあ、すじモダン、ミックス………それからオムソバ、お願いします。」


カウンター席に並んで座り、店の人に昔通りのオーダーを頼む。


大抵、家族で来てもこの3品は外さなかった。







「うわぁ………美味しいっ。」


隣に座り何とも言えない表情で食べる千晶さんを時々見ながら、俺も口に頬張る。


そう言えばーーーー


お好み焼きとか全然、食ってなかったっけ。


一口食べるごとにまた一つ、大阪時代の俺の記憶が蘇ってくる。


そっか………


俺、大阪に帰って来たんだな。


お好み焼きを食ってそんな事を実感する自分に笑えてくる。


「こんな沢山、食べらんないかと思ったけど……ふふっ、食べれるもんだね。」


3品を二人でシェアして綺麗に平らげた。


「俺、まだ食えますよ。」


「ええっ、流石に無理よ。」


「はっはっ、冗談。俺もお腹一杯です。」


この俺が冗談言うなんて…明らかに浮かれてるな。


まだまだ続く行列に速やかに勘定を済ませ店の外に出る。


「ご馳走さまでした。ごめんね。お世話になったお礼に私がご馳走したかったのに。」


申し訳なさそうに千晶さんが言う。


「気にしないでください。ここは俺に格好つけさせてくださいよ。」


そう言うと千晶さんは


「うん。素直にご馳走になります。ありがとう。」


その笑顔を貰えただけで俺は充分です。










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