ライギョ
「ありがとうございます。」


とても行儀よくそう言うと原 妃咲は千晶さんからペットボトルのお茶を受け取りキャップを開けるとグビグビと飲みだした。


この暑さの中、しゃべり続けて喉が渇いていたのだろう。


続けて千晶さんが差し出したペットボトルを俺も受け取ると直ぐにキャップを開け一気に半分くらいまで飲んだ。


喉の渇きが少し落ち着く。


屋根の付いた休憩所にほんの少し海からの風が吹き抜けて行く。


「話、続けてええかな?」


さっき、簡単に自己紹介を済ませた山中が言うと原 妃咲はコクリと一つ頷いた。


「安田はーーー、ヌシを捕まえようとしてたんや。」


「えっ?」


俺が間抜けな声を出すと、


「俺も最初、あいつから聞いた時、おんなじリアクションしたわ。」


俯き加減で山中は独り言の様に呟いた。


「安田が言ってたの?」


「ああ、あいつを雷魚釣りに誘った時にちょっと話したんや。いつも大阪城の堀で釣りしてるよなぁって。」


約10年分の記憶を一気に遡らせあの時、山中がそんな事を言ってたのを思い出す。


だから安田にも声を掛けたんだと。


原 妃咲はさっきまでとは違って今度は俺と山中の会話をじっと黙って聞いていた。けれど表情は相変わらずのポーカーフェイスで崩れない。


目の前の中学生が何を考えているのかさっぱり分からない。


千晶さんと小夜子は休憩所のベンチに腰掛けず少しだけ距離を置いて立っていた。


大勢の大人で囲み威圧感を与えたくないと言う気持ちの現れなんだと思う。




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