ライギョ
「親から聞いたそうや。大阪城の堀に住むライギョを全て排除しろとある祈祷師に言われたらしいわ。神聖な場を外来種が汚していると。あのままでは新たな淀君の呪いがライギョに宿るだろうと。だから堀に住むライギョを一匹残らず処分せよ。さもないと呪いの掛かった息子は長生きできないからって。」


「長生き出来ないって安田がってこと?」


「ああ、そうなるな。」


「まさか、真に受けた訳じゃないよね?」


そんな馬鹿げた話ってないだろ?堀のライギョを全て排除しろだなんて。


「でも…実際、そうなったやん。安田はあの堀の中に…。」


山中はそれ以上続けなかった。そして誰もその言葉に続けるものもいなかった。


暫く沈黙が流れた。


この時期の公園は暑さからか人はまばらだが、相変わらず海岸の方は賑わっているのがこの高台からも分かる。


海を見るなんていつぶりだろうか?


毎年、8月に海辺で花火が上がりとても綺麗なんだとここに来る車の中で小夜子が千晶さんに説明していた。


千晶さんに花火見せてやりたいな。


もし俺が花火に誘ったらなんていうだろうか?


そんな事を思う自分にふと、俺は今、何をしているのだろうか?


と言う思いが頭を過る。


あの夜に起きた出来事の真相を確かめたい。


安田が本当にこの世からいなくなってしまったのか、ちゃんと知りたい。


その為にここへやってきたと言うのに、まだ何一つ解決していない。


それどころかーーー呑気に花火の事を考えているなんて。


本当はもうどうでもよくなってしまったのだろうか?


俺は大阪の地を離れそれなりに大人になりそれなりに毎日を過ごしている。


山中にしたって、昔と変わったとは言え、小夜子が寄り添ってくれている。


そして、竹脇も。


あの日から何かが少しずつ変わってしまった俺達。


いつだって一緒の時間を過ごしていた俺達はあの日以来、別々の人生を辿り始めた。


それぞれがそれぞれの思いを抱え、そうして体も心も大人になった。


俺はあの夜の事も思い出さなくなっていた。いや、思い出さないようにしていた。


なのに、




















それでもまだ、安田が死んだんだって事を受け入れられないでいる俺は中2のままだ。


心があの夜に止まったままだ。



















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