さよならのはなびら
さよならのはなびら

卒業式では、卒業生全員の名前が呼ばれ、一人ずつ返事をする。
私は在校生席で、ただひたすら前を見ていた。
やがて、先輩の名前が呼ばれる。
「はい!」
大きな声が体育館中に響く。
2年前と同じ背中を向けて、壇上に上がる。
証書を受け取り、降りてくる。
また遠くからだったけど、先輩の端正な顔がはっきりわかるようだった。

今しかない、と決意し、式後に先輩を探す。
校門の前の人だかりをかき分けていく。
その人だかりの外れに先輩の姿を見つけた。
足を止める。
心臓がものすごい音をたてていた。
一歩一歩近づく。
何歩か進んで、また足を止めた。
先輩に駆け寄る、一人の女子生徒。
仲良さげに話してから、二人は手を繋いで人だかりの方へ、消えていった。
しばらくその場に立ちすくむ。
そして、当てもなく私は走った。

たどり着いたのは、中庭だった。
大きな桜の木の前で、手を開く。
ひとひら、花びらが手のひらにのる。
涙が一粒頬をつたう。
2年間の想いと共に、流れていく。
手を閉じる。
「さよなら」
もう一度手を開くと、ちょうど風が吹いた。
風が花びらをさらっていく。
想いは全部花びらにのって。
私は今日、諦める。
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop