桃の花を溺れるほどに愛してる
「カハァ……ッ!」


 身体中を駆け抜ける痛みに、息が、出来なかった。


「いきなり石を投げてくるなんざ、いい度胸をしてるなぁっ?!このっ、クソガキがぁっ!!!」


 何度殴られ、何度蹴られたかは分からない。

 意識が遠退きそうになると次に与えられる痛みで目を覚まし、左腕に至ってはまったく痛みを感じない。……麻痺してしまったのだろうか?

 桃花さんが無事なら、これくらいどうってことないや……と、ぼんやりとした頭の中で桃花さんの無事を安心していた。


「……ると……春人!」


 だれかの呼び声にゆっくりと目を開けると、目の前には父さんの顔があった。切羽詰まったような、焦っているような顔色を浮かべている。


「とう……さ……?」

「ああ、よかった!意識を取り戻したんだな!春人!」

「ぼく……なにが……――はっ!桃花さん!桃花さんはっ?!」

「落ち着け、春人。彼女なら無事だ。彼女が通報してくれたんだ、お前が暴力を受けているってな」

「よかっ……た……」


 結局のところ、桃花さんに恥ずかしい場面を見せてしまったなぁ。

 でも、こんなボロボロの僕の姿なら、見ても記憶を取り戻していることはないよね……?それなら、なおさらよかった……。
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