桃の花を溺れるほどに愛してる
「ったく……お前は無茶をしすぎた。いくら大切な人を守れとはいっても、これはやりすぎだろ」

「すみません……。でも、桃花さんの記憶のためにも、これが1番だと思いまして……」

「ハァ……これからは気をつけろよ?お前、分かっているのか?身体中は痣だらけ、顔だって膨れ上がって、左腕に関しては折れてやがる」

「はは……。僕、今、みっともない姿をしていますよね。本当、格好悪いなぁ……」

「バカ野郎」


 こつんっ……と、父さんにおでこを小突かれた。


「だれかを命懸けで守った証である傷が、みっともなくも格好悪くもないに決まっているだろうが」


 父さん……ありがとう。

 僕は、父さんがそう言ってくれたことに心の底から感謝し、再びそのまま眠りについたんだ。


 ――それからしばらくして、無事に完治した僕は病院をあとにして、真っ先に家へと帰った。

 すぐに部屋に置かれているモニターに電源をつけ、桃花さんの様子を伺う。

 特に何も変わっていない桃花さんに、心の底から安堵する。

 よかった。本当に記憶は戻っていないみたいだ。桃花さんが無事なら、僕の左腕がなくなっても、全然構わないんだよ……?

 久々に見る桃花さんの姿に、僕の心は満たされたようだった。
< 195 / 347 >

この作品をシェア

pagetop