桃の花を溺れるほどに愛してる
「今日の昼、惚気でも聞かせてよ!なぁーんてっ」

「えっ?!」

「あははっ。顔が赤くなっている桃花ちゃん、かわいいねー!じゃあ、またあとでねっ!」


 榊先輩は笑いながら、走って先に自分の教室へと向かって行った。

 ……もしかして、からかわれた、のか?

 それにしても、春人のことを非難していた榊先輩が、私達の惚気を聞きたがるわけ……ないよね。

 やっぱり、ただたんにからかわれただけ……なのかなぁ……?


「おい!」

「はいっ?!」


 背後から聞き覚えのない男子生徒から声をかけられ、私は思わず、身体をビクリと震わせた。

 おそるおそる振り返ってみるけど……やっぱり、知らない男子生徒だ。

 しかも、フツーは名札で先輩なのか後輩なのかが分かるんだけど、この子、名札をつけていない!

 そのうえ、背が高くてスラッとしていてかっこよくはあるんだけど、髪は金色に染めていて制服もはだけていて……ふっ、不良さん……かなぁ?あはは……。

 ……。

 …………フツーに怖いんですがっ!!!


「楽しそうなところを悪いけど、あんたさぁ、気をつけた方がいいよー?」

「え?えっ?」


 たっ、楽しそう……?

 いや、別にそういう気持ちでいたわけじゃ無いけれども……。


「さっきの榊センパイ、女を泣かせることでも有名な人だから」


 えっ?女を……泣かせる?それってどういう……?

 榊先輩にファンがたくさんいる意味としては、毎日女の子たちを泣かせていると思うけど……。
< 216 / 347 >

この作品をシェア

pagetop