桃の花を溺れるほどに愛してる

「その鍵、没収！」

「えええっ？！」

「『えええっ？！』じゃないわよ！家主の許可無く鍵を作るなんて、ダメに決まってるじゃない！不法侵入と一緒っ！」

「……ちゃっ、ちゃんと玄関から入っていますよ……？」

「だからそれは家主の“許可無く”作った鍵で、でしょうが！だからその時点で立派な不法侵入だっつーの！」

「そんなぁ……」


　シュンと方を落とし、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる春人。

　仮にも大の大人がそんなことでいちいち泣き出しそうになるな！アンタはちょっとしたことですぐにうじうじとする女かっ！

　でも、正直に言うと、ちょっとかわい……い……いいいっ、いいわけないでしょっ？！かわいいなんて思っていないわ！フンッ！


「……嫌なら、別れる」


　ぽつり、小さく呟いた言葉。

　でも、春人の耳にはしっかりと聞こえていたようで、その両目が大きく見開かれた。