桃の花を溺れるほどに愛してる
「――それなら、桃花さんの手で僕を殺してください。あっ、でも、やっぱりこの考えは罪ですかね……?申し訳ございません。やっぱり、桃花さんから注いでもらった愛が消えないうちに、ヒトリで遠くへ消えますね」


 にっこり。天使のような笑みを浮かべながら、春人はそう言いのけた。

 どうして?

 どうしてにっこりと笑いながら、そんな「殺して」だの「消えます」だの言えるの?

 そう簡単に言えるの?言えてしまうの?私には理解出来ない。

 けど、むやみに春人に対して「別れる」は言わない方がいい。言ってしまったら、春人は本当にヒトリで消えるつもりだろうから。……今、そう学んだ私だった。

 いくら相手がストーカーだろうと、ちょっと歪んだ思考の持ち主だろうと、――ううん、誰であろうと、やっぱり、簡単に自分の命を粗末に扱うマネはしないでほしいから。


「ごめん、なさい。軽い気持ちで別れるなんて言って……」

「謝らないでください。桃花さんに謝られると、とても申し訳ない気持ちになるんです。桃花さんは笑顔が1番素敵なのですから、つねに笑っていてほしいのです」
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