桃の花を溺れるほどに愛してる
「そうだよ、仕方なく付き合うはめになったの。でも、私は彼のことをどうとも思ってはいなくって、別れたいんだけど……もう、どうしたらいいのか……」


 ストーカーだけど、いい人なのは分かっている。ちょっと値の張るブレスレットを買ってくれて、気に入っているから今も身につけているわけだし……。

 でも、それ以上の感情が、芽生えてこない。

 仕方なくといえど付き合ったらそのうち恋心も芽生えるかなぁ?って思ったこともあった。でも、やっぱりダメだった。


「桃花からフレば?」


 それができたら苦労しないっつーの。


「ああ……ほら、アレじゃん?フッたら死にそうじゃん?アイツ」

「まあ……言われてみたら、確かに」


 死にそうっていうか……おそらく、死ぬだろうな。私はそれだけは絶対に嫌だから、フレないわけなんだけれど。


「ね?だから逆に嫌われてフラれようと思ったんだけど……もう、肉体的にも精神的にも限界……」

「うーん……。よっぽど桃花のことが好きなのね、天霧さんって」

「はぁ~……」

「そりゃあ、重い溜め息もつきたくはなるわね」


 もうホント、春人の想いの大きさ?っていうの?それには感服です……。
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