桃の花を溺れるほどに愛してる
 京子は、かたまっていた。


「ちょっ、きょう……」

「はぁあああっ?!」


 どうしたのかと名前を呼ぼうとしたら、京子の発した大きな叫び声に掻き消されてしまった。

 えっ、なに?私、変なことを言った?!

 目をぱちくりさせて驚いていると、京子は発した絶叫に続けて言葉を放つ。


「あんなにイケメンであんなに優しい彼氏をどうとも思っていない、しかもフラれたい……って、なにっ、どういうこと?!あなた、そんな人間だったわけ?!」


 ……あのね、京子サン。アンタ、そうは言っているけど、あの人ってもともとストーカーだからねっ?!

 いやっ、これは言ったらややこしくなるのが分かっているから言わないけど、あの人のもともとを知ったら絶対に別れろって言うって!


「えーっと、告白してきたのは向こうからなんだけど、」

「知ってる!4週間前に聞いた!」

「私は彼とは初対面なわけで、」

「それも知ってる!社会人が高校生を好きとかロリコンかよって話が盛り上がったけど、やっぱりいい人に変わりはないから別にロリコンでもいいか。いや、そもそもロリコンっていうのは幼女のことが好きなやつを言うんだっけ!っていうあの話で聞いた!」

「仕方なく付き合うはめになったというか……」

「え、そうだったの?!」


 京子、急に真顔にならないでよ。
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