笑わぬ黒猫と笑うおやじ

 今日のお昼ごはんは何だろうか?
 表情にこそ出さないものの、内心はワクワクしている。
 それほどお爺さんの料理は美味しいのだ。


「……あれ、」


 いつも休憩時間に寛ぐ場所、お爺さんの部屋に行くと、テーブルにポツン、とお弁当が置いてあった。
 目を瞬かせながらそれを手に取り見ると、コンビニ弁当であることがわかった。

 たったひとつ、置かれたコンビニ弁当を手に、お爺さんへと視線をやった。


「すまないねぇ、今日は特に調子が悪くて…立てなかったんだ」
「いえ、それは大丈夫ですけど……これ、どうしたんですか?まさか、自分で買いになんて…」
「ふふ、違うよ。息子に頼んでおいたんだ」
「息子さん?」
「あぁ、そうだよ……ろくでもない、愚息さ」


 そう言いながらも、お爺さんは息子さんを思い浮かべているのか、微笑んでいた。

 誰かを思い浮かべて、笑う。
 それはとても素敵な事だ。
 私も……いつか、笑いたいな。

 私はそんなことを思いながらコンビニ弁当のハンバーグを食べ始めた。
 当たり前だけど、そのハンバーグは、お爺さんがいつか作ってくれたものには、到底かなわなかった。


「(お爺さん、大丈夫かな……)」


 口に出しては言えないが、私はお爺さんの体調が心配で、あまり美味しくないハンバーグが更に美味しくなくなった。
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