映画みたいな恋をしよう
婚姻届と保険契約書の呪い

午後から雪らしい。
カーキー色の上着の襟を直し、俺は空を見上げる。

最近
青い空を見ていない。

湿り気のある風を受け
店の扉を開ける。

【才真佐釣具店】
親の代から続いている
小さな釣具店。

昔からある小さな商店街の中の、小さな釣具店が俺の財産。
財産?
鼻で笑って中に入る。

こんな小さい街の
こんな小さな釣具店を継ぐ気なんて、さらっさらなかった。笑えるくらいなかった。

実際笑ってた。

冗談じゃない。
こんなしょぼい町に留まるワケないじゃん。
都会に出てスカイツリーを眺めながら、酒と煙草と女と金におぼれてる……はずが、本気でおぼれて海に沈む。

撃沈。


親が残してくれたこの店が、唯一の財産。

適当に店を開き
適当にパチンコをして
適当に趣味のDVDを見て

酒を飲み
煙草を離さず

いつの間にか生まれてから40年。

いつの間にか
きっと死んでゆくのだろう。
< 1 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop