Doll‥ ~愛を知るとき
「違います‥。」
反射的にそう答えたのは、あたしが『岬 愛波』だから。
男の人は、少し怪訝な表情をした。
背広を着ている。
濃いグレーのスーツ。
さっきオバサンの店に入って行った人かもしれない。
その男の人は目尻に皺を寄せ、優しい表情を作ると
「失礼ですが、お名前は?」
と、訊いた。
穏やかな口調、なのに有無を言わせない、そんな威圧感があった。
「岬 愛波です。」
あたしは、自分の名前を告げた。