Doll‥ ~愛を知るとき
 

8月半ば、その日は予約も少なくて、とても暇だった。

パートのオバサンに頼まれ、倉庫まで割り箸の入った箱を ひとりで取りに出た。


ミンミンと、蝉が五月蝿い。

太陽は暑く、アスファルトの照り返しが強かった。

重い扉を開いて、薄暗い倉庫の中に入る。

中身を確認した段ボール箱を持ち上げ、また外に出た。

路面に箱を下ろして、扉を閉めようと顔を上げた。

騒いでいた蝉たちが、ふと静まった。

「浩也く‥んっ‥。」

突如、艶(ナマメ)かしい声が聞こえ、あたしの心臓は ギュッと縮んだ。


 
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