Doll‥ ~愛を知るとき
 

ドクドクと激しく鼓動が鳴り出した。


一瞬 聞こえた声は、空耳なんかじゃなかった。

きっと、倉庫の裏。

倉庫と壁の隙間から、その声は漏れてきた。


湿風が生い茂る欅の葉をザワザワと揺らした。

静まっていた蝉が また五月蝿く羽音を立て出した。

足が動かない。


─ 立ち去らなきゃ‥


そう思っているのに、物音を立てることが怖い。

あたしは立ち竦んだまま、倉庫の扉を閉めることが出来なかった。


 
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