Doll‥ ~愛を知るとき
「あの‥。」
小さく息を吸い込んだ。
伝えたい想いは ひとつしか無いのに、また迷っている。
樹は、徐に立ち上がると、あたしの後ろを通ってオーディオのスイッチを入れた。
彼が通り過ぎた瞬間、DOKIDOKIと鼓動が速度を増した。
小さなボリュームで音楽が流れ出す。
流行りの女性アーティストの曲。
そのハスキーな歌声に、嫉妬してしまう。
これまでも考えなかった訳じゃないけど‥、
─ すきな人いるのかな‥?
ふと、そんなことを考えて、哀しくなった。
「なにかな?」
からかうような口調で訊いて、樹は あたしの隣に座った。