Doll‥ ~愛を知るとき
†12 愛偽
予定通り新居に引っ越し、予定通り結婚式をした。
予定通り新婚旅行に行き、予定通り浩也との生活が始まった。
そして、予定通り樹は店を退職していた。
仕事中、何度も厨房に視線を遣ってしまう。
もう、ここにはいないのに‥。
「愛波さん、お座敷やからワゴン持って来てくれる?」
「はい。」
朝美さんに声を掛けられ、ハッと我に返った。
─ 忘れなきゃ‥
一夜の夢、樹に抱かれた夜を思い出す度に、体の奥が熱くなる。
今もまだ、恋の感情は消えない。
それでも、浩也との生活を選んだのは、あたしだから‥。