Doll‥ ~愛を知るとき
浩也は敏感だから、もしかしたら、何かを感付いて様子を見に来ているかもしれない。
上手く言い逃れる自信なんか無いのに、頭の中で言い訳を考えている。
十字路を右に曲がり、公園に沿って走った。
アパートの下に、浩也の車が停まっていないことを確認して、ホッと息を吐く。
階段を上がり部屋の前に立ち、玄関の鍵を開け中に入った。
薄暗がりの静寂が 愚行を責める。
愚かなんだ。
結局、あたしの浅はかな行動が二人を裏切ることになった。
─ ホントに、ばか‥
樹の唇、肌の感触が まだ強く残っている。
納得しないココロが悲鳴を上げ続けた。
─ 苦しいよ‥
狭いキッチンの隅で身を縮め、あたしは座り込んで泣いた。