Doll‥ ~愛を知るとき


産後四日目のお昼過ぎだった。

ベッドに横になって、ウトウトと微睡(マドロ)んでいた。


── カチャ‥

部屋の扉が開いた小さな音で、ふと目が覚めた。

「ビックリした!来てくれたんや。」

嬉しそうな真保さんの声。

「夕方から店やし、遠いから すぐ帰るけどな。」

答えると、彼女の旦那さんは部屋に入って来た。

続けて、誰かが入って来た。

その姿に息を飲んだ。


─ うそ‥


眠気が一気に飛ぶのを感じた。


「姉ちゃん、おめでと。赤ちゃん見て来たけど、可愛いやん。」

関西訛りの言葉。

胸元に十字架のネックレスが光っている。

黒かった髪は金色になっていた。


一年振りに見る彼は、まるで知らない人。

確かに 一瞬目が合ったのに、素知らぬ振りで樹は あたしの前を通り過ぎ、真保さんのベッドへと向かった。


 
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