Doll‥ ~愛を知るとき
あんな酷いことをされたあとなのに‥。
「あーくん‥。」
おとなしく浩也に抱っこされている愛翔に、何の罪も無い。
怒っていた父親が優しくなったから、安心しているだけ。
頭では分かっているのに、ココロが その事実を拒絶した。
「出て行きたかったら行けや。愛翔は渡さん。」
嘲るように言って、浩也は家を出て行った。
愛翔がいなければ、あたしは ここから出て行けない。
ココロが空っぽになったみたい。
もう涙は出なかった。
─── 暴君‥
そんな言葉が脳裏を過った。