Doll‥ ~愛を知るとき


あたしは、彼を見上げた。

殴られた耳は、まだジンジンしている。


「愛翔に服着せろや!」

逆らえば、何をされるか分からない。

あたしは立ち上がり、寝室に向かった。

床に落ちたままの愛翔の服を取り、リビングに戻って言われた通りに着せた時

「愛翔、ばぁちゃんち行くぞ。」

浩也は、愛翔を抱き上げた。

「待って!なんで連れてくの?」

「なんでもえーやろ!」

怒鳴り付けると、浩也は

「愛翔、ママにバイバイは?」

と、愛翔に向けて、わざとらしい猫なで声を出した。


嫌だって泣いて欲しかった。

なのに、浩也に抱かれた愛翔は泣き止んでいて、あたしにバイバイと小さな手を振った。


 
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