Doll‥ ~愛を知るとき
飛び起きるあたしに気付いて、樹が目を覚ました。
夢の中の男みたい、あたしの呼吸も荒い。
「愛波‥?」
寝起きの掠れた声で、樹が呼んだ。
その声に現実へと引き戻されていく。
あたしは時々、怖い夢に魘(ウナ)される。
そのことを彼は知っているんだ。
「ごめん‥。樹‥。」
「大丈夫か?」
「うん‥。」
樹が体を起こした。
そして、あたしを抱きしめた。
「オレがいるから、安心しな。」
彼の腕の中で、あたしは小さく頷いた。