Doll‥ ~愛を知るとき
樹の朝は早い。
現場が遠いと、まだ陽の昇らない内に起きる。
飛び起きたあたしのせいで、あまり眠らないまま、彼はその日 仕事に出掛けた。
玄関で靴を履く時、いつものように
「どこにも行くなよ。」
お布団の中のあたしに、そう声を掛けて‥。
気のせいかもしれない。
けれど、怖い夢を見た時は、特に念を押して行く気がする。
鍵の閉まる音が小さく響き、ひとりになった部屋で、あたしはまた眠った。