Doll‥ ~愛を知るとき
「お前、今アイツの名前呼んだやろ‥。」
今まで聞いたどの声よりも怖い声だった。
食い縛った歯の隙間から、その声は漏れていた。
怒りに体を震わせ大きく目を見開いて、浩也は、あたしを見据えていた。
あまりにも深く、樹のことを考えていた。
苦痛から逃げたくて、樹に抱かれている妄想に耽っていた。
名前を口にしてしまったのかどうか、分からない。
呼んでいない自信なんて全く無かった。
背筋の凍る思い。
「なんの‥こと‥?」
馬乗りになったまま あたしを見下ろす浩也に、とぼけるしかなかった。