Doll‥ ~愛を知るとき
樹の腕の中で、冷たく硬いアスファルトを肌に感じていた。
ズキズキと頭が痛んで、どんよりと脳が曇っているようだった。
あたしが愚かだから、また樹を巻き込んでしまったことが苦しかった。
目尻を涙が伝っていて
─ あたしなんか死ねばいい‥
そう思っていた。
もう‥、何もかも忘れたい‥
樹のことも愛翔のことも、自分のことさえも忘れたい‥
─ 消えたいよ‥
視界の端に、浩也が逃げて行く姿が映っていて
「愛波‥?」
ぼんやりと見える樹の瞳に小さく頷いて、重くなる目蓋に従うように、あたしは目を閉じた。
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